1970 僕たちの青春

その昔、上野の雀荘で開かれた麻雀大会で、萩原聖人さんと同卓した後、軽く挨拶して、『1970 僕たちの青春』好きでした、と言ったら萩原さんも、あれ、俺も好きなんだよ、と笑っていた。
1990年にフジテレビで放送された2時間映画である。
舞台となっているのが、僕の生まれ故郷である豊橋の時習館高校だったこともあり、当時、母がVHSに録画していたビデオがあったので、僕自身、高校生になったあたりから何度となく観たものだった。

出演してるのは、吉岡秀隆、萩原聖人、筒井道隆、永堀剛敏、川越美和、石田ひかりといった面々。
時代が1970年ということもあり、ちょうど僕の母の青春期と丸かぶりだったためか、母もよく、この映画を観ていた。

「私の好きだったテルくんも、時習館に通っててね。私も、成績的には時習館でもいけたんだけど、親から商業高校にいけって言われたから、離れ離れになっちゃったのよね。テルくんも、私のことが好きでね。ずっと文通してたのよ」

なんてことを、母が話していたことを思い出す。
そんなわけで、どちらかというとこの映画を観ると、自分の青春期よりは、母の青春時代を連想することになる。
昔の若者たちの青春と、今の若者たちの青春では、当然ながら変わった部分もあるだろうし、変わらない部分もあることだろう。

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この作品の中で、僕が個人的にすごく好きなエピソードがある。

主人公のノンポリ(吉岡秀隆)は、友達の番長(筒井道隆)が片想いしている文学(川越美和)へのラブレターの代筆を頼まれる。やがて返事が届き、番長の振りをしたノンポリと文学との文通が始まる。やがてノンポリは文学のことが本当に好きになってしまう……というエピソード。

で、卒業式のあと、ノンポリと文学は、こんな会話をするのだ(三河弁のイントネーションに脳内変換してね)。

「(あたし)…結婚するの」
「知ってる」
「そう…。ね、ちょっと、早すぎると思わん?」
「どうかなぁ」
「あたし……、……バージン」

(BGMとしてSimon&Garfunkel『The Sounds of Silence』が流れる)
(ちなみに、上のは文学が担任の先生と二人でスキー旅行に行ったという噂が流れて、クラスの中で非処女扱いされていたため、こういう発言が入ったのだろう)

(ぎこちなくうつむいて歩く二人)

「手紙、なかなか良かったわ」

(驚いたように文学のほうを見るノンポリ)

「知っとったわ、最初っから。面白いから、乗ってあげたの」
「そう」
「本気で書いたの?」
「…ああ」
「…あたしも」

「あなた宛に、本気で」

「俺が書いとるんだって言ってくれるの、待ってた」

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文学の、このセリフのあとの吉岡秀隆の表情がメチャクソ良いのだ。こっちまで思春期みたいな気持ちになってしまう。

ふと思ったんだけど、最近はこういうのが、LINEとかに移行してるのかもしれないね。
これ、なんて返信したら良い? とか、友達同士でやってたりすることもあるのだろうか。

ちなみに、上述のシーンは以下の文学のセリフへと続く。

肩肘、張ってたのよね。結局。
自分がね…なんか…。
分かっちゃった。
素直になることが、どれだけ大切かってこと。
あなたから教わっちゃった。
ばかみたい。
ありがとう。
さよなら。

自転車に乗って、走り去っていく文学の後ろ姿を眺めるノンポリのモノローグ。

校門を出ていく、文学の白い足が、ボクの目に焼き付いた。
その年、ボクは大学受験に失敗した。
一年後、文学に、子供が生まれたという噂を聞いた。

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こういう映画を見ていると、青春の始まりと終わりをふと考える。
どうだろうね。自分では、自分の青春が終わってるのか続いてるのかも正直なところ、よく分からない(いや、冷静に考えれば終わってるんだろうけど)。

で、ためしに妻に「君の青春の終わりはいつだった?」と訊いたら「私は、青春の幻影よ」とメーテルのようなことを言われたのであった。
いや、まぁ確かに良い女ってのは、(不可避的に)誰かの青春の幻影になるものなんだけどさ。
逆のパターンって、ほとんどないよな、と思う。

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