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2020年3月16日

  • 2020-03-16
  • 2020-03-31

花盛りの風牌に(前編)

これと言って、何かそれらしい理由があったわけでもない。なんとなく、生家に帰らないまま半年ほどが過ぎていた。20世紀も終わりが近づいていた、1998年のことである。おそらくは、まだこの国が多少の寛容さを残していた、最後の時代であろう。 僕は20歳で、世間的には大学生という身分に収まっていた。大学のクラブハウス棟にある、演劇部の部室がその頃の僕の寝ぐらだった。部室には、演劇の舞台に使うための平台が敷き […]