TAG

小説

  • 2020-04-11
  • 2020-04-11

花盛りの風牌に(後編)

こういう時の、僕の予感は大抵当たる。 「メメくんって、いつもここで寝泊まりしてるの?」 僕の腕に、頭を乗せたまま博子が言った。 「まぁな。ここで寝て、起きれば誰かしら麻雀の相手がいる。楽なもんだ」「ほっといても、マーくんみたいな相手が来るから?」「分かってんなら、言っとけよ高橋に。おれ相手に、小狡く稼ごうなんて10年早いってよ」「さっきの半荘、私、通してないよ」「嘘つけ。別にそんなことくらいで、ガ […]

  • 2020-03-16
  • 2020-03-31

花盛りの風牌に(前編)

これと言って、何かそれらしい理由があったわけでもない。なんとなく、生家に帰らないまま半年ほどが過ぎていた。20世紀も終わりが近づいていた、1998年のことである。おそらくは、まだこの国が多少の寛容さを残していた、最後の時代であろう。 僕は20歳で、世間的には大学生という身分に収まっていた。大学のクラブハウス棟にある、演劇部の部室がその頃の僕の寝ぐらだった。部室には、演劇の舞台に使うための平台が敷き […]